…という位である。みんな不思議だ不思議だというが、そんな事実が在り得るとか、在り得ないとか断言し得る者は一人も居ない。あっても終《しま》いには水掛論《みずかけろん》になってしまうので、結局、お互いの脳髄を怪しみ合いつつ物別れになる事が、最初から解り切っている。そうして、あーでもない。コウでも駄目だと、あらゆる推理や想像を捏《こ》ねくりまわしたあげく、トウトウ悲鳴をあげ初めて『脳髄が、脳髄の事を考えるとはコレ如何《いか》に』なぞと、場末の寄席みたようなコンニャク問答の鉢合せを繰り返している現状ではないか。
ドウダ諸君……ザットしたところがコンナ調子である。
『人間の脳髄』が何よりも先に研究を遂げておかねばならぬ『人間の脳髄の病理』……精神病学の基礎、中心となるべき重要な諸問題は、御覧の通り『物を考える脳髄』のために、片《かた》っ端《ぱし》からフン詰まりの状態を現出させられているではないか。地上、一切の精神病学者と、一切の精神病院の診断、治療を、無能、無意義の嘲笑の中に立往生させているではないか。そうして地上、無数の精神病者を、永久、絶対に救われ得ない侮蔑、虐待の世界に放置させているでは
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