微鏡の下で、脳髄どころか、頭も尻も無い下等動物の連中が、暑い寒いを正確に判断したり、喰い物の選《え》り好みをするのはまだしも、人間の脳髄なんぞが寄っても附けない鋭敏な天気予報までも、ハッキリと現わして見せるから痛快ではないか。おまけにソンナ下等動物は、口にこそ云わねメイメイに身ぶり素振りで、
「脳髄が無くとも物は考えられますよ」
「私たちは全身が脳髄なのですよ」
「私たちは脳髄の全体をソックリそのまま変形して、手足にしたり、胴体にしたり、又は耳、眼、口、鼻、消化排泄、生殖器官なんどの色々に使い分けているのですよ」
「あなた方は、そんな作用を分業にして、別々の器官に受持たせておられるだけの事ですよ」
「あなた方の手足だってチャント物を考えているのですよ」
「お尻でも見たり聞いたりしているのですよ」
「股を抓《つ》ねれば股だけが痛いのですよ」
「蚤《のみ》が喰えばそこだけが痒《かゆ》いのですよ」
「脳髄は痛くも痒ゆくも何ともないのですよ」
「まだお解りになりませんか」
「アハハハハハハハハ」
「オホホホホホホホホホ」
「イヒヒヒヒヒヒヒ」
と笑い転げているからベラボーではないか。
これ
前へ
次へ
全939ページ中263ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング