だ」としか説明が出来なくなっているではないか。
ところが生憎《あいにく》な事に、そうした中風患者の脳髄を病理解剖に附した結果を見ると、いつも豈計《あにはか》らんやの正反対になっている。脳出血でやられているのは、脳髄の全体ではない。僅かに脳髄の中の或る小さな、狭い、一箇所だけに限られている場合が極めて多いのだから皮肉ではないか。泣きも笑いも出来ない脳髄のイタズラ劇にしかなり得ないから悲惨ではないか。
モット皮肉で奇抜な例には夢中遊行《むちゅうゆうこう》というのがある。この病気は無論アタマ万能宗の科学者達には寄っても附けない不可解病として諦らめられ、敬遠されているのであるが、しかもその上に、そのフラフラの夢中遊行患者は、そんな科学者たちのアタマをイヨイヨ馬鹿にすべく、色々な奇蹟を演出する事があるのだ……たとえばこの種の患者は、その夢中遊行の発作に罹《かか》っている最中に限って、トテモその人間のアタマとは思えない素晴らしい智慧や技巧をあらわして、人間|業《わざ》では出来そうにないスゴイ仕事をやって退《の》けたりする。……のみならずその人間が翌《あく》る朝眼を醒ますと、いつの間にやら元の木
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