《メートル》ぐらいあって左右の腕が日本人の股《もも》とおんなじ大きさをしていた。それがいつもの通り、妾の大好きな黄色い上等の印度服を引っかけて、おなじ色のターバンを高々と頭に捲き上げているばかりでなく、眼のまわりが青ずんで、瞳《ひとみ》がギョロギョロして、鼻が尖《と》んがって、腮鬚《あごひげ》や胸毛を真黒くモジャモジャと生《は》やしているのだから、ちょうどアラビアン・ナイトに出て来る強盗の親分みたいなスバラシサで、見上げただけでも気持ちがスーッとした。この印度人は故郷に居る時分からうらない[#「うらない」に傍点]が本職で、四十二歳の今日がきょうまで、何とかいうバラモンの神様に誓って、童貞を守っているのだ……と自分で云っていた。だけど色が黒いからホントだか嘘だかよくわからなかった。
妾は毎朝ブル・オヤジが帰ったあとで、誰も居なくなると、この男に抱かれてユックリお湯に入れてもらうのを何よりの楽しみにしていた。それは思いようによってはこの上もない、ステキな冒険に違いなかったから……。
けれどもハラムは妾の処に来た最初から、どこまでも柔順な妾の家来になり切っていた。今朝《けさ》もやっぱりい
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