行方を晦《くら》まして居るらしい事が判明した――
 ――美少女エラ子は赤岩氏が一箇月ばかり前に何処《どこ》からか連れて来て匿《かく》まっている同氏の私生児で、今日まで固く口止されていた事実を小使の白木某が陳述した――
 ――同アパートは新築|匆々《そうそう》の為め、一階の事務室と、エラ子の居室のほか全部がガラ空《あ》きであった。――且《かつ》、爆発現状の目撃者が重傷、惨死、又は人事不省に陥っている為め目下の処、事件の真相について、何等の手がかりを得ず――
 ――警察当局は曰《いわ》く――××党とは絶対に無関係だ。赤岩氏が同アパートの空室《あきべや》に秘密運搬中の、鉱山用の火薬類が、取扱いの不注意の為めに発火したものと、少女エラ子に絡まる情痴関係の殺人が、偶然に一致したものでは無いか――爆弾ならば一発で効果は充分の筈である。路面に残っている二個の大穴が、何と云っても疑問の中心でなければならぬ――なお目下詳細に亘《わた》って取調中云々――
 ――疑問の美少女エラ子の行方は――正体は?――

 妾《わたし》はフキ出してしまった。あんまりトンチンカンな記事なので、一人でゲラゲラ笑い出したらカフ
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