の神、タコの木の神、泥海の神、または太陽の神、月の神、星の神、リンガムの神、ヨニの神々のいずれにも増して大きな、神々の中の大神様で御座いまする。その運命の大神様の思召《おぼしめ》しによって、この世の中は土の限り、天の涯《はし》までも支配されているので御座います」
妾はハラムの底深い声の魅力に囚われて、動くことが出来なくなってしまった。電気死刑の椅子に坐らせられて、身体《からだ》がしびれてしまったようになってしまった。大きな呼吸《いき》をしても……チョイト動いても、すぐに運命の神様の御心に反《そむ》いて、大変な事が起りそうな気がして来た。
そんなに固くなっている妾を真正面にして、ハラムは裁判官のように眼を据えた。なおも、おごそかな言葉をつづけた。
「……けれども……けれども……御発明なお姫《ひい》様は、今朝《けさ》から、それがお解りになりかけておいでになるので御座います。……お姫《ひい》様は今朝《けさ》から、眼にも見えず、心にも聞えない何ものかを探し求めておいでになるので御座います。……で御座いますから、そのようにお淋しいのでございます」
妾は返事の代りに深いため息を一つした。そう
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