です。さあ、あなたの持っていらっしゃるものを皆下さい。着物も帽子も靴もお金も」
と云ううちに、女の児を捕えて下着一枚にしてしまいました。そうして巾着の口を開きながらこう云いました。
「さあお嬢さん、私の口真似をなさい。そうすれば命だけは助けて上げます。オーチンパイパイ」
女の児が泣く泣く口真似をすると思うと、見る間に巾着の中に消え込みました。
「メーチュンライライ」
と、支那人はまた一人女の児を呼び出しました。
こうして支那人は次から次へと女の児の着物を剥《は》いで行きましたが、その度に「口真似をした罰だ」と云い聞かせました。
春夫さんは、今にも美代子が出て来るか出て来るかと待ちましたが、巾着の中の女の児の数が多いと見えてなかなか出て来ません。その中《うち》に机の上は女の児の洋服や和服で山のようになりました。
支那人は、その山を見ながらさもうれしそうにニコニコしておりましたが、やがて長い長い煙管《きせる》を出して煙草を吸おうとしましたが、燐寸《マッチ》がないのに気が付いて、鍵で扉を開けて廊下へ出て、梯子段を駆け降りて行きました。
急いで物蔭に隠れた春夫さんは、その間に中に
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