クチマネ
夢野久作

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)お家《うち》の前で

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)反物|入《い》りまションか

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)けんとんけんちゅう[#「けんとんけんちゅう」に傍点]
−−

 美代子さんは綺麗な可愛らしい児でしたが、ひとの口真似をするので皆から嫌われていました。
 或る日の事、美代子さんはお家《うち》の前でたった一人で羽子《はね》をついていますと、一人の支那人が反物を担いで遣って来て、美代子さんのお家《うち》の門口で、
「奥さん、旦那さん、反物|入《い》りまションか」
 と言いました。美代子さんはカチリカチリと羽子をつきながら、
「入りまショんよ」
 と云いました。
 支那人はニヤニヤ笑って美代子さんを見ておりましたが又、
「けんとんけんちゅう[#「けんとんけんちゅう」に傍点](支那の織物の名)入りまションか」
 と云いました。
「てんどんけんちん[#「てんどんけんちん」に傍点]入りまションよ」
 と美代子さんは矢張《やは》り羽子《はね》をつきながら、又
次へ
全9ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング