様からこう尋ねられますと、女中は吃驚《びっくり》したような顔をして顔を見合わせました。そうして二人一時にこう答えました。
「いいえ。お嬢様は夢のお話など一つも私達になさいません」
「えっ……お前達は姫から夢の話を一つもきかないのか」
と王様はこわい顔をしてお睨みになりました。
「ハイ」
「嘘を云うときかないぞ」
「嘘は申しません」
「よし。あっちへ行け」
といわれますと、女中はお辞儀をして行ってしまいました。
王様は女中が行ってしまうと、オシャベリ姫をぐっとお睨みになりました。
「コレ……オシャベリ姫。お前はなぜそんなに嘘ばかりオシャベリをするのだ」
と王様は雷のような声で姫をお叱りになりました。
けれども姫はちっともこわがらずにこう云いました。
「いいえ。私はちっとも嘘を云いません。本当にそんな夢を見て、本当にその話を女中にしたのです。女中の方が嘘をついているのです」
と云い張りました。
けれどもお父様の王様は、もう姫の云うことを本当になさいませんでした。
「お前の云うことはみんな嘘だ。その上にそんなに強情を張ってオシャベリをやめないならば、もうおれの子ではない。この国
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