二人の女中は私に、その夢のことを誰にも云ってはいけないと云いました」
「まあ、お前はほんとに馬鹿だねえ……ナゼそんな大切な夢をそんなにオシャベリしてしまうの」
とお母様のお妃はほんとに残念そうに云われました。
「イイエ。お母様。あたしはお婿さんなんかいらないの。それよりもそのお話しをした方がよっぽどおもしろいの。だってこんな面白い夢を見たことは生れて初めてなのですもの」
「お前はほんとにしようがないおしゃべりだねえ。それじゃお前のお守の女中がその夢のことを外《ほか》へ話さないようにしましょう」
とお妃様が云われました。
「いいえ。構わないのよ、お母様。女中がお話しなくともあたしがお話ししますからダメですよ」
とオシャベリ姫が云いました。
王様もお妃様もおしゃべり姫のオシャベリに呆れておいでになるところへ、姫のお付きの女中が二人揃って姫の前に来て頭を下げて、
「お姫様、お化粧のお手伝いを致しにまいりました。もうじき御飯になりますから」
とお辞儀をしました。
お妃様はそれを見て、
「オオ。お前達は昨夜《ゆうべ》姫からおもしろい夢のお話をきいたそうだね」
と云われました。
王
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