オシャベリ姫
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)お妃《かあ》様の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大層|憤《おこ》って、

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 ある国に王様がありまして、夫婦の間にたった一人、オシャベリ姫というお姫さまがありました。
 このお姫様は大層美しいお姫様でしたが、どうしたものか生れ付きおしゃべりで、朝から晩まで何かしらシャベッていないと気もちがわるいので、おまけにそれを又きいてやる人がいないと大層御機嫌がわるいのです。
 ある朝のこと、このオシャベリ姫は眼をさまして顔を洗うと、すぐに両親の王様とお妃《かあ》様の処に飛んで来て、もうおしゃべりを初めました。
「お父様お母様、昨夜《ゆうべ》は大変でしたのよ。ゆうべあたしがひとりで寝ていますと、どこから這入って来たのか、一人の黒ん坊が寝床のところへ来まして、妾《わたし》の胸に短刀をつきつけて、宝物のあるところはどこだと、こわい顔をしてきくのです」
「まあ、それからどうしたの」
 と王様とお妃《かあ》様
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