はビックリして姫にお尋ねになりました。
「それからね……妾はしかたがありませんから、宝物《たからもの》の庫《くら》のところへ連れて行ったら、黒い腕で錠前を引き切って中の宝物をすっかり運び出して、お城の外へ持って行ってしまったのですよ」
「なぜその時にお前は大きな声で呼ばなかった」
「だって、その宝物をみんな妾に持たせて運ばせながら、黒ん坊は短刀を持ってそばに付いているのですもの」
「フーム。それは大変だ。すぐに兵隊に追っかけさせなくては。しかしお前はそれからどうした」
「やっとそれが済んだら、黒ん坊は妾の胸に又短刀をつきつけて今度は、オレのお嫁になれって云うんですの」
「エーッ。それでお前はどうした」
「あたしはどうしようかと思っていましたら……眼がさめちゃったの」
「何……どうしたと」
「それがすっかり夢なのですよ」
「馬鹿……この馬鹿姫め。夢なら夢となぜ早く云わないのか」
と王様は大層腹をお立てになりました。
「まあ。それでも夢でよかった。あたし、どんなに心配したかしれない」
とお妃さまもほっとため息をつきました。
「オホホホホホ。まあ、おききなさい。それからね、わたしは眼をさ
前へ
次へ
全53ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング