では嘘を吐《つ》いたものは石の牢屋に入れることになっているのだから、貴様もいれてやる」
と云ううちに王様は立ち上って、泣き叫ぶ姫の襟首《えりくび》をお掴《つか》みになりました。
お母様のお妃は慌ててお止めになって、
「サア姫や。嘘を吐《つ》いて済みませんでしたとお云い。これから決して嘘を吐《つ》きませんとお云い。お母さんが詫《わび》をして上げるから」
と云われましたが、姫は頭を振って「イヤイヤ」をしながら、強情を張って泣くばかりでした。
「よし。そんなに強情を張るならいよいよ勘弁できぬ」
と王様は大層腹をお立てになって、とうとうオシャベリ姫を石の牢屋に入れておしまいになりました。
石の牢屋はお城の地の下の、真暗なつめたいところにありました。
オシャベリ姫はそこに入れられて、あんまり怖いので石の上に寝たままオイオイ泣いていましたが、いつまで経っても誰も助けに来てくれません。お母様や女中の名前を呼んでも、あたりは只シンとして真暗なばかりです。
そのうちに姫は泣きくたびれて、ウトウトねむりかけますと間もなく、
「ニャー」
と云うやさしい猫の声がきこえました。
見ると、向うの
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