ぬとはね起きて、入り口から逃げ出そうとしましたが、看護婦の青蛙が両方からかじり付いて放しません。
 その中《うち》に窓の方を見ますと、窓の外はもう一面に蛙が山のように押し寄せて、あっちへ押し合いこっちへヘシ合い、大変な騒ぎです。おまけにそのシャベルこと。
「グレーレ、グレーレ、グレーレ、グレーレ
 グレーチョコ、グレーチョコ
 グルーロ、グルーロ、グルーロ
 レロロ、レロロ、レロ、レロ、レロ」
「ツララ、ツララ、ツラララロ
 クロラ、クロラ、クロロロラ
 ゲレロ、ゲレロ、ゲレレレロ
 グラ、グラ、グラ、グラ、グラ
 ゲラ、ゲラ、ゲラ、ゲラ、ゲラ
 ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ」
 姫は一生懸命大きな声をして、
「ちょっと待って頂戴。そんなに押すと寝台が壊れてしまうよ。そんなにしゃべると妾の耳が破れてしまうよ」
 と叫びましたが、蛙どもはなおも一生懸命にのぞき込んでしゃべります。
 姫はもう死に物狂いになって、蛙たちの頭を踏《ふみ》つけて表に飛び出しましたが、門のところまで来ると又驚きました。
 オシャベリ姫は蛙のオシャベリに驚いて、蛙の病院から飛び出して表へ逃げ出しましたが、表門を出て
前へ 次へ
全53ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング