ンクンクンクン」
 と何か話しますと、殿様蛙夫婦は眼をクルクルまわしてうなずいております。
 姫は可笑しくなって来ました。
「妾は今蛙の国に来て、蛙の病院に入れられているのに違いない。疣蛙はここのお医者さんで、殿様蛙はきっとここの王様で妾を見に来たのに違いない。妾の顔と蛙の顔とは大変に違うから珍らしがっているのだろう」
 こう思っているうちに、殿様蛙は赤蛙の兵隊を連れてサッサと帰って行きました。
 そうすると大変です。
 蛙の国の王様がわざわざ病院までオシャベリ姫を見に来たということを国中の蛙はみんなきいたらしく、いろんな蛙がゾロゾロと蛙の病院の入り口から這入って来ては姫の顔をのぞき込みます。虫眼がねを出してのぞき込むものもあります。ノートブックを出して何か書き止めて行くものもあります。または写真機を出して撮影《うつ》して行くものなぞいろいろありまして、中には何やらお話をしかけるものもあります。
「グレレ、グレレ、グレレ、グレレ
 ケオコ、ケオコ」
 雲雀の国で懲《こ》りていたのでさっきからだまって我慢をしていたオシャベリ姫は、もう我慢し切れなくなって吹き出しました。
「オホホホホ。あ
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