の穴から、ジロジロと光る眼が、一心に三好を見ているのに気が付いた。
三好は思わずドキンとした。白い大入道の中味が、生きた人間である事を発見したので……そうしてその眼の光りが、何となく見覚えがあるようで……しかも何かしらニコニコと笑っているような気はいに惹き付けられて、真正面からソーッとその暗い、繃帯の穴を覗き込んでいたが、忽ちハッと全身を固張《こわば》らせる拍子に、一尺ばかり飛上った、そのまま後《あと》も見ずに待合室を飛び出して行こうとする背後《うしろ》から、何かしら巨大な、フワフワするものが抱き付いた。振返ってみる迄もなく、それが今の白坊主である事がわかった。
「ウワアッ」
と三好は夢中になって藻掻《もが》いたが、白坊主の力は意外に強く、肩先を羽がい締めにして来るので呼吸《いき》が詰まりそうになって来た。そのうちに白坊主は三好を抱えたまま、よろよろとよろめいて背後《うしろ》の腰かけに尻餅を突いた。
「ダアッ……ガワガワガワガワ……ウガ――ッ……」
三好の叫び声を聞いた駅夫や駅員と、あとから人力車に乗って来た乗客が二三人、近寄って来たが、あんまり奇妙な光景なので、茫然として入口に
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