って、湖の底の真珠の御殿へいらっしゃい。お兄さまのルルさまを湖の底へお呼びになったのは、その女王様です」
睡蓮の花がここまで云った時、あたりが急に薄暗くなりました。お月様が黒い雲にかくれたのです。そうしてそれと一所に、睡蓮の花は一つ一つに花びらを閉じ初めました。
ミミはあわててその花の一つに尋ねました。
「睡蓮さん。ちょっと花びらを閉じるのを待って下さい。どうして真珠の御殿の女王様は兄さんをお呼びになったのですか」
けれども、暗い水の上の睡蓮はもう花を開きませんでした。
「湖の底の女王様は、どうして私だけをひとりぼっちになすったのですか」
とミミは悲しい声で叫びました。けれども、湖のまわりの睡蓮はスッカリ花を閉じてしまって、一つも返事をしませんでした。お月様もそれから夜の明けるまで雲の中に隠れたまんまでした。
「アラ、ミミちゃん。こんな処で花の鎖を作っててよ。まあ、奇麗なこと。そんなに長くして何になさるの」
と、大勢のお友達がミミのまわりに集まって尋ねました。
ミミは夜《よ》の明けぬうちから花の鎖を作り初めていたのですが、こう尋ねられますと淋しく笑いました。
「あたし、この
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