ルルとミミ
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)濁《にご》って来ると、
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)只一度|微《かす》かな唸《うな》り声を出し
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
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むかし、ある国に、水晶のような水が一ぱいに光っている美しい湖がありまして、そのふちに一つの小さな村がありました。そこに住んでいる人たちは親切な人ばかりで、ほんとに楽しい村でした。
けれどもその湖の水が黒く濁《にご》って来ると、この村に何かしら悲しいことがあると云い伝えられておりました。
この村にルルとミミという可愛らしい兄妹《きょうだい》の孤児《みなしご》が居りました。
二人のお父さんはこの国でたった一人の上手な鐘造りで、お母さんが亡くなったあと、二人の子供を大切《だいじ》に大切に育てておりました。
ところが或る年のこと、この村のお寺の鐘にヒビが入りましたので、村の人達に頼まれて新しく造り上げますと、どうしたわけか音がちっとも出ません。お父さんはそれを恥かしが
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