ゃろか」
「……お前たちの事をバカタレって云っているんだよ……ホホホホ」
という声が不意に背後《うしろ》の方から聞こえたので、二人は又もビックリして振り向いた。見るとそれはこの別荘の若大将夫婦で、たった今ボート乗りから帰って来たものらしく、二人とも眩《まぶ》しいほど白い洋服を着て、濡れ草履《ぞうり》を穿《は》いて、ニコニコしながら突立っていた。
二人の子供はホッと安心したように溜め息を吐《つ》いた。そうして又も不思議そうに赤い鳥の方を振りかえった。
「……エー皆さん……エー皆さん……私は……私は……すなわち……すなわち……」
と赤い鳥は又別の事を云い出した。それにつれて奥さんは、日の照りかかる小鼻に皺《しわ》を寄せながら笑い出した。
「ホーラネ……ホホホホホホ……お前さん達の顔を見て馬鹿タレって云っているでしょう……ネーホラ……バカタレーッて……」
「……ちがう……」
と大きい方の児《こ》が眼をパチパチさせながら云い放った。イクラカ憤慨したらしく黒い頬を染めながら……しかし若い奥さんは凹《へこ》まなかった。イヨイヨ面白そうに金歯を出して笑った。
「イイエ……よく聞いて御覧……ホ
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