らいの村の子供が二人連れで、素裸《すはだか》のまま、浜へテングサ[#「テングサ」に傍点]を拾いに来ていたが、いい加減に拾って帰りがけに、炎天の下の焼け砂の上を、開け放された別荘の裏木戸の前まで来ると、キョロキョロと中をのぞきながら、赤煉瓦塀《あかれんがべい》の中へ這入り込んだ……、家中《うちじゅう》の者がモーターボートで島巡りに出て行くところを今朝《けさ》から見ていたので……そうして縁側の小松の蔭に吊してある、赤い鳥の籠に近付きながら恐る恐るのぞきこんだ。
その顔を見ると人なつこいらしい赤い鳥は、突然頭を下げて叫び出した。
「モシモシ。モシモシイ。コンチワ……コンチワコンチワ……」
二人の子供はビックリして砂だらけの顔を見合わせた。
それを見ると赤い鳥はイヨイヨ得意になったらしく、一心に子供の顔を見下しながら、低い声で歌を唄い出した。
「……ジャン、チェーコン、リウコン……コンリウ、コンジャン、チェーコンチェー……チェーリウコンコンジャンコンチェー……じゃんすいじゃんすい、ほうすいほう……すいすいじゃんすい、ほうすいほう……」
子供は又も黒い顔を見合わせた。
「何て云いよるのじ
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