と笑いの爆発……。
若い男はハッと両手を顔にあてて、ブルブルと身をふるわした。初めから嘲弄されていたことがわかったので……同時に、横に居た桃割れも、ワッとばかり男の膝に泣き伏した。
硝子戸の外の笑い声が止め度もなく高まった。
巡査も腕を組んだまま天井をあおいだ。
「アアハアハアハア。馬鹿なやつどもじゃ。アアハアアアハア……」
空家《あきや》の傀儡踊《あやつり》
みんな田の草を取りに行っていたし、留守番の女子供も午睡《ひるね》の真最中であったので、只さえ寂《さ》びれた田舎町の全体が空ッポのようにヒッソリしていた。その出外れの裏表|二間《ふたま》をあけ放した百姓家の土間に、一人の眼のわるい乞食爺《こじきじじい》が突立って、見る人も無く、聞く人も無いのにアヤツリ人形を踊らせている。
人形は鼻の欠けた振《ふ》り袖《そで》姿で、色のさめた赤い鹿《か》の子《こ》を頭からブラ下げていた。
「観音シャマを、かこイつウけエて――。会いに――来たンやンら。みンなンみンやンら。……振りイ――の――たンもンとンにイ――北ンしよぐウれエ。晴れン間《ま》も――。さンら――にイ……。な――か
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