ウィートポテトーであったのじゃナ」
硝子戸の外の暗《やみ》の中で二三人クスクスと笑った。
すると、うつむいていた若い男が、濡れた髪毛《かみのけ》を右手でパッとうしろへはね返しながら、キッと顔をあげて巡査を仰いだ。異状に興奮したらしく、白い唇をわななかしてキッパリと云った。
「……違います……スウィートハートです……」
「フフ――ウム」
と巡査は冷やかに笑いながらヒゲをひねった。
「フ――ム。ハートとポテトーとはどう違うかナ」
「ハートは心臓で、ポテトーは芋《いも》です」
と若い男はタタキつけるように云ったが、硝子戸の外でゲラゲラ笑い出した顔をチラリと見まわすと、又グッタリとうなだれた。
巡査はいよいよ上機嫌らしくヒゲを撫でまわした。
「フフフフフ。そうかな。しかしドッチにしても似たもんじゃないかナ」
若い男は怪訝《けげん》な顔をあげた。硝子戸の外の笑い声も同時に止んだ。巡査は得意らしく反《そ》り身《み》になった。
「ドッチもいらざるところで芽を吹いたり、くっつき合うて腐れ合うたりするではないか……アーン」
人が居なくなったかと思う静かさ……と思う間もなく、硝子戸の外でドッ
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