て間もなく、蛋白に關する講演を赤坂の三會堂でやつた時、高木さんも聽いて居られて、「それは面白い話だ、蛋白質の種類によつて榮養價が異なることは初めて聞いた、米と麥とでも蛋白質の性質が違ふのではあるまいか、研究してもらひたい」と云はれたことがある。
當時、白米が脚氣の原因であると考へる醫學者の中にも、白米に毒素があるだらうといふもの、有害な微生物が附着して居るといふもの等、いろ/\な説があつたが、又一方には、醫界の某々大家などは、アイクマンの説に賛成せず、寧ろ一種の流行病ではないかと考へられたやうである。また「さば」の如き青い色の魚を食ふと脚氣になるといふ説もあつた。
オリザニンの發見
この間にあつて私は、脚氣の病原とは無關係に、純榮養學上の立場から、米の成分の研究を進め、また動物試驗を行つたのであるが、白米を與へて動物が死ぬといふことは、私は最初當然と考へた。それは白米を分析すれば直ちに判る通り、白米には蛋白質が七%、澱粉及纎維が九〇%を占め、脂肪は非常に少く一%内外であり、無機成分は更に少く、僅かに〇・五%に過ぎない。斯の如き偏頗な食物で動物が完全に育つ筈はない。それで白米に不足
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