私が変死した少年のことについて小林に話すと、彼は非常に同情して、隧道《トンネル》の崩れたのは自分の監督が行き届かなかったからで、ほかに親類《みより》がないと言うならば、このまま村役場の手に渡すのも可憐そうだからおれが引き取って埋葬してやるというので、一切を引き受けて三田村の寂しい法華寺《ほっけでら》の墓地の隅に葬ることとなった。もっともこの寺というのは例の足立駅長の世話があったのと、納豆売りをしていた少年の母のことを寺の和尚《おしょう》が薄々知っていたのとで、案外早く話がついて、その夜のうちに埋葬してしまうことになったのだ。
 今夜はいつになく風が止んで、墓地と畑の境にそそり立った榛《はん》の梢が煙のように、冴《さ》え渡る月を抽《ぬ》いて物すごい光が寒竹の藪《やぶ》をあやしく隈どっている。幾つとなく群立った古い石塔の暗く、また明《あか》く、人の立ったようなのを見越して、なだらかな岡が見える。その岡の上に麦酒《ビール》会社の建築物が現われて、黒い輪廓《りんかく》があざやかに、灰色の空を区画《くぎ》ったところなど、何とはなしに外国《とつくに》の景色を見るようである。
 咽《むせ》ぶよ
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