くまっていたところを、急に崩れ落ちて、こんなあさましい最後を遂げたに相違あるまい。
少年の事情はせめて小林監督にでも話してやろう、私は顔をあげて死骸の傍に突っ立っている逞《たくま》しい労働者の群を見た。薄い冬の夕日が、弱い光をそのあから顔に投げて、猛悪な形相《ぎょうそう》に一種いいしれぬ恐怖と不安の色が浮んでいる。たとえば猛獣が雷鳴を怖れてその鬣《たてがみ》の地に敷くばかり頭を垂れた時のように、「巡査《おまわり》が来た!」
「大将も一しょじゃあないか」「大将が来たぞ!」と土方は口々に囁く、やがて小林監督は駐在所の巡査を伴立《つれだ》ってやって来た。土方は言い合わせたように道をあける。
二十二
「いい成仏《じょうぶつ》をしろよ!」と小林の差図で工夫の一人がショーブルで土を小さい棺桶の上に落した。私はせめてもの心やりに小石を拾って穴に入れる。黙っていた一人がこんどは横合いから盛り上げてある土をザラザラと落したので棺はもう大かた埋もれた。
小坊主が、人の喉を詰まらせるような冷たい空気に咽《むせ》びながら、鈴を鳴らして読経をはじめた。
小林は洋服のまま角燈を提げて立っている
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