駅夫日記
白柳秀湖

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)他人《ひと》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)この間|下壇《した》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)高谷さん※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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     一

 私は十八歳、他人《ひと》は一生の春というこの若い盛りを、これはまた何として情ない姿だろう、項垂《うなだ》れてじっと考えながら、多摩川《たまがわ》砂利の敷いてある線路を私はプラットホームの方へ歩いたが、今さらのように自分の着ている小倉の洋服の脂垢《あぶらあか》に見る影もなく穢《よご》れたのが眼につく、私は今遠方シグナルの信号燈《ランターン》をかけに行ってその戻《もど》りである。
 目黒の停車場《ステーション》は、行人坂《ぎょうにんざか》に近い夕日《ゆうひ》が岡《おか》を横に断ち切って、大崎村に出るまで狭い長い掘割になっている。見上げるような両側の崖《がけ》からは、芒《すすき》と野萩《のはぎ》が列車の窓を撫《な》でるばか
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