か、いつそんな社会になるであろうというようなことを深く考えるのは大嫌いだ、またそんな暇もないのだが、少くも現在自分たちは朝から晩までこんな苦しい労働をしてもなぜ浮ぶ瀬がないのか、なぜこんな世知辛《せちがら》い社会になったのか、また自分たちと社会とはどういう関係になっているのかということぐらいは皆が知っていてくれなくちゃあ困る、僕が先刻《さっき》話したようなことをだね」
小林監督は私を非常に愛してくれる。今日も宵から親切に話し続けて今の社会の成立をほとんど一時間にわたって熱心に説明してくれた。「先年大宮で同盟罷工《ストライキ》があってから、一時社会では非常にあの問題が喧《やかま》しかったが、労働者はそう世間で言うように煽動《おだて》て見たところで容易く動くものじゃあない、世間の学者なんという奴らが、同盟罷工と言えばまるでお祭騒ぎでもしているように花々しいことに思うのが第一気に喰わねい、よしんば煽動《おだて》たにしろ、また教唆《そそのか》したにしろ、君も知っての通りあの無教育な連中が一個月なり二個月なり饑※[#「飮のへん+曷」、第4水準2−92−63]《うえ》を忍んで団結するという事実の
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