》をたべて、降り路をぐんぐんおりた。いつか落葉松おうるあたりまできた。ドイツあたりのクリスマスの画みたようなとM君とかたるに、梢《こずえ》の雪がさらさらと落ちて顔にかかる。西山は二、三カ所、今し雪をふらしているのか、西北の天には黒い幕が垂れかかって、裾がふわりと山々を包んでいた。明日《あす》も大抵だめだねと言いながら、幾うねりして、物静かな山辺温泉。それから乾いた田をよこぎって浅間へ。六時すこしまわっていた。
二たび武石峠へ
「きのうよりはよいね」と、宿から常念《じょうねん》岳の鋭いピラミッド形なせる姿をながめて、私はM君にいった。「ようござんす」。「出かけるかね」。「出かけましょう」。九時十五分、私たちはまた草鞋《わらじ》をつけた。九時半、沢をのがれて尾根にいずれば早や佳境。土地の人のいう西山は、あらかた現れていた。「槍はまだ見えないか」。「もっと登ると見えます」と案内者は答えた。里の天候は、「晴、北風弱」とあるが、尾根はかなりの強い風。
私は黙々として、後《おく》れがちな歩を運んだ。樵夫にもおうた。きのうの小鳥とる男は、すこし低いところにおった。ふりつんだ雪のおもてに
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