る。「た(誰)」・「いつ(=いづ)」・「なに(何)」など言ふ語は、未経験な物事に冠せる疑ひである。ついでに、其否定を伴うた形を考へて見るがよい。「たれならなくに」・「いづこはあれど(=あらずあれど)」・「何ならぬ……」などになると、経験も経験、知り過ぎる程知つた場合になつて来る。言ひ換へれば、疑ひもない目前の事実、われ[#「われ」に白丸傍点]・これ[#「これ」に白丸傍点]・こゝ[#「こゝ」に白丸傍点]の事を斥すのである。たれ[#「たれ」に白丸傍点]・いつ[#「いつ」に白丸傍点]・なに[#「なに」に白丸傍点]が、其の否定文から引き出されて示す肯定法の古い用語例は、寧《むしろ》、超経験の空想を対象にして居る様にも見える。われ[#「われ」に白丸傍点]・これ[#「これ」に白丸傍点]・こゝ[#「こゝ」に白丸傍点]で類推を拡充してゆけるひとぐに[#「ひとぐに」に傍線]即、他国・他郷の対照として何《ナ》その国[#「何《ナ》その国」に傍線]・知らぬ国[#「知らぬ国」に傍線]或は、異国・異郷とも言ふべき土地を、昔の人々も考へて居た。われ/\が現に知つて居る姿《ナリ》の、日本中の何れの国も、万国地図に載つ
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