五)[#「(五)」は縦中横] かこ・ふ[#「かこ・ふ」に傍線]とかしづ・る[#「しづ・る」に傍線]とかいふ語がかく[#「かく」に傍線]とかしづ[#「しづ」に傍線]とかいふ語より以前にあつたこと、または偶然にかく[#「かく」に傍線]とか、しづ[#「しづ」に傍線]とかいふ語を無関係な数種の語の中に没交渉的にふくんでをつたのであるといふ証明を欲する。
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以上おぼろげながら名詞語根説について述べたつもりである。進んで用言の五段について名詞法を考へて見たいと思ふ。先づ将然言からいふと、
■将然名詞法
この段から名詞の出来ることは亀田先生が先日大学で講演せられた。先生の考では、おや[#「おや」に傍線]は老ゆ[#「老ゆ」に傍線]の将然名詞法で、綯ふ、鳴るの将然言がなは[#「なは」に傍線]、なら[#「なら」に傍線](屁)となつたのであらうとのことである。この考を借用して敷衍すると、つる[#「つる」に傍線]の名詞法がつら[#「つら」に傍線](列)、つれ[#「つれ」に傍線](連)で、さゆ[#「さゆ」に傍線]の名詞法がさや[#「さや」に傍線](―に)(―か)で、ちる[#「ちる」に傍線]の将然からちら/\[#「ちら/\」に傍線]、ちら・つく[#「ちら・つく」に傍線]などのちら[#「ちら」に傍線]といふ体言が出、足玉も手玉もゆらに[#「ゆらに」に傍線]などのゆら[#「ゆら」に傍線]はゆる[#「ゆる」に傍線]の名詞法であることは疑もない。全体副詞の語根といふものはみな体言である。用言の将然言が体言となるにはすつかり名詞となつてしまふわけにもゆかないので、体言的な副詞の語根となつて止つてるものが多いことは考へがたくはない。形容詞の語根についてもまた同様な現象をみる。若、高、優《ヤサ》(―男、―形)、浅、深などもまた動詞の将然言に形容詞接尾語し[#「し」に傍線](し、しく)がついたのである。
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若は古動詞わく[#「わく」に傍線](文献の今徴すべきものがない)の将然名詞法であつたらうといふことは、わきいらつこ[#「わきいらつこ」に傍線](わかいらつこの音韻の変化ではあるまい)もあればわくご[#「わくご」に傍線]もある。いわきなし、いわけなしもある(いときなし[#「いときなし」に傍線]、いとけなし[#「いとけなし」に傍線]がい・とき〈分別〉なしと考へ
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