太子に仕へ、中世以後の日本の民俗芸術の祖と謂はれて居る、秦[#(ノ)]河勝には、壺の中に這入つて三輪川を流れて来た、との伝説が附随して居る。此壺には、蓋があつた。桃太郎の話よりは、多少進化した形と見られる。
       たま[#「たま」に傍線]のいれもの
日本の神々の話には、中には大きな神の出現する話もないではないが、其よりも小さい神の出現に就いて、説かれたものゝ方が多い。此らの神々は、大抵ものゝ中に這入つて来る。其容れ物がうつぼ[#「うつぼ」に傍線]舟である。ひさご[#「ひさご」に傍線]のやうに、人工的につめ[#「つめ」に傍点]をしたものでなく、中がうつろ[#「うつろ」に傍点]になつたものである。此に蓋があると考へたのは、後世の事である。書物で見られるもので、此代表的な神は、すくなひこな[#「すくなひこな」に傍線]である。此神は、適切にたま[#「たま」に傍線]と言ふものを思はす。即、おほくにぬし[#「おほくにぬし」に傍線]の外来魂の名が、此すくなひこな[#「すくなひこな」に傍線]の形で示されたのだとも見られる。
此神は、かゞみ[#「かゞみ」に傍線]の舟に乗つて来た。さゝぎ[#「さゝ
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