ぎ」に傍線]の皮衣を着て来たともあり、ひとり[#「ひとり」に傍線]虫の衣を着て来たともあり、鵝或は蛾の字が宛てられて居る。かゞみ[#「かゞみ」に傍線]はぱんや[#「ぱんや」に傍線]の実だとも言はれるが、とにかく、中のうつろ[#「うつろ」に傍点]なものに乗つて来たのであらう。嘗て柳田国男先生は、彼荒い海中を乗り切つて来た神であるから、恐らく潜航艇のやうなものを想像したのだらうと言はれた。
かやうに昔の人は、他界から来て此世の姿になるまでの間は、何ものかの中に這入つてゐなければならぬと考へた。そして其容れ物に、うつぼ[#「うつぼ」に傍線]舟・たまご[#「たまご」に傍線]・ひさご[#「ひさご」に傍線]などを考へたのである。
ものいみ[#「ものいみ」に傍線]の意味
何故かうしてものゝ中に這入らねばならぬのであつたか。其理由は、我々には訣らぬ。或は、姿をなさない他界のものであるから、姿をなすまでの期間が必要だ、と考へたのであつたかも知れない。併し、もう一つ、ものがなる為には、ぢつとして居なければならぬ時期があるとの考へもあつた様だ。えび[#「えび」に傍線]・かに[#「かに」に傍線]
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