間を地上に居てまた天へ還つたといふ風に、きれいに作られてゐる。
類型の話は、猶幾つかある。桃太郎の話が、やはり其一つである。我々の考へから言へば、桃の中にどうして人が這入つたらうと疑はないでゐられないが、昔はそこまで考へる必要はなかつたのだ。此話では、桃の実が充実して来ると言ふ考へと、桃太郎が大きくなつて出て来る時期を待つて居ると言ふ考へとが、一つになつて居る。朝鮮には、卵から生れた英雄の話がたくさんある。日本と朝鮮とは、一部分共通して居る点がある。あめのひぼこ[#「あめのひぼこ」に傍線]は、朝鮮からやつて来た神だが、やはり卵の話に関聯して居る。
卵の話は、日本にも全然ない事はないが、日本には、卵でなく、もつと外の容れ物があつた。瓜に代表させていゝと思ふが、瓜といふと、平安朝頃まではまくわ[#「まくわ」に傍線]の事で、喰べられるものゝ事を言うた。古くは、主としてひさご[#「ひさご」に傍線]を考へた。其ひさご[#「ひさご」に傍線]の実が、だん/\膨れて来て、やがてぽんとはじける時がくる。其は其中に、或ものが育つて居ると考へたのである。
更にかうした話は、もつと異つた形でも残つて居る。聖徳
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