ちかひ[#「ちかひ」に傍線]・もゝかひ[#「もゝかひ」に傍線]・しる[#「しる」に傍線]にもかひ[#「かひ」に傍線]にもなどの、用語例で見ると、昔は籾のまゝ食べたのかとも思はれる。籾は吐き出したのであらう。さうでないと、かひ[#「かひ」に傍線]の使ひ方が不自然である。
かひ[#「かひ」に傍線]は、もなか[#「もなか」に傍線]の皮の様に、ものを包んで居るものを言うたので、此から、蛤貝・蜆貝などの貝も考へられる様になつたのであるが、此かひ[#「かひ」に傍線]は、密閉して居て、穴のあいて居ないのがよかつた。其穴のあいて居ない容れ物の中に、どこからか這入つて来るものがある、と昔の人は考へた。其這入つて来るものが、たま[#「たま」に傍線]である。そして、此中で或期間を過すと、其かひ[#「かひ」に傍線]を破つて出現する。即、ある[#「ある」に傍線]の状態を示すので、かひ[#「かひ」に傍線]の中に這入つて来るのが、なる[#「なる」に傍線]である。此がなる[#「なる」に傍線]の本義である。
なる[#「なる」に傍線]を果物にのみ考へる様になつたのは、意義の限定である。併し果物がなると言うたのも、其中にも
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