]・ある[#「ある」に傍線]は、往々同義語と考へられて居るが、ある[#「ある」に傍線]は、「あらはれる」の原形で、「うまれる」と言ふ意はない。たゞ「うまれる」の敬語に、転義した場合はある。万葉などにも、此語に、貴人の誕生を考へたらしい用語例がある。けれども、厳格には、神聖なるものゝ「出現」を意味する言葉であつて、貴人に就いて「みあれ」と言うたのも、あらはれる[#「あらはれる」に傍線]・出現に近い意を表したと見られるのである。即、永劫不滅の神格を有する貴人には、誕生と言ふ事がない。休みからの復活であると信じたのである。ある[#「ある」に傍線]が「うまれる」の敬語に転義した訣が、そこにある。
うまる[#「うまる」に傍線]の語根は、うむ[#「うむ」に傍線]である。うむ[#「うむ」に傍線]は「はじまる」と関係のある語らしい。うぶ[#「うぶ」に傍線]から出て居る形と見られる。此に対して、なる[#「なる」に傍線]と言ふ語がある。ある[#「ある」に傍線]は、形を具へて出て来る、即、あれいづ[#「あれいづ」に傍線]であるが、なる[#「なる」に傍線]は、初めから形を具へないで、ものゝ中に宿る事に使はれて
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