。また漂著神《ヨリガミ》の信仰がある。此もたま[#「たま」に傍線]成長の信仰と関係があつて出来たものだと思ふ。たま[#「たま」に傍線]が成長をするのに、何物かの中に這入つて、或期間を過すと考へた事から、其容れ物として、うつぼ舟[#「うつぼ舟」に傍線]・ひさご[#「ひさご」に傍線]を考へ、また衣類・蒲団の様なものにくるまる事を考へたのであるが、更に此たま[#「たま」に傍線]は、石の中にも這入ると考へた。どうして石の様なものゝ中に這入ると考へたか、とにかく、日本の古代にはさうした信仰があつた。此が後に、たま[#「たま」に傍線]が神に飜訳せられて考へられる様になると、神が石になると信じられる様になつた。今度アルスの児童文庫の中の一冊として書かれた柳田先生の「日本伝説集」にも、石の成長する話が出て居るが、先生はこれまでにも、さうした石の成長する話をたくさん書かれて居るので、「君が代は千代に八千代に」の歌なども、単に詩人の空想から、あゝした言葉を連ねたゞけではない。既に古くさうした信仰があつて、あの歌は出来たのだと論じられた事もある。
どうして、石の様なものが成長する、と考へたのであらうか。拾う
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