は、津堅《ツケン》島の大祝女《ウフヌル》の如きは、其拝をうける座で、床をとり、蚊帳を釣つて寝てゐる。津堅《ツケン》の方は、そこで夫と共寝をする位である。のろ[#「のろ」に傍線]自身が同時に、神であると云ふ考へがなければ、かうした事はない筈である。本島に於て、神を意味するちかさ[#「ちかさ」に傍線](司)は、先島ではのろ[#「のろ」に傍線]と言ふ語の代りに用ゐられてゐる。ねがみおくで[#「ねがみおくで」に傍線]の「おくで」は、久高島では、神の意味らしく使ふ。
生前さへも其通りだから、死後に巫女を神と斎くは勿論である。本島から遠い離島《ハナレ》に数ある女神の伝説は、殆どすべて、島々に巫女として実在した人の話にすぎない。即、沖縄神道では、君《キミ》・祝《ノロ》に限つては、七世にして神を生ずといふ信仰以上に出て、生前既に、半ば神格を持つてゐるのである。羽衣・浦島伝説系統の女神・天女に関する限りなき神婚譚は、皆巫女の上にありもし、あり得べくもあつて(柳田氏)民習の説話化したものに疑ひない。其上余り古くない時代に、久高の女が現にある様に、一村の女性挙つて神人生活を経た者と見えて、今尚主として姉を特
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