神《カン》であるが、此は単に、宅《ヤカ》つ神としてに過ぎない事は既に述べた。のろ[#「のろ」に傍線]自身は、由来記などに記した程、火の神を大切にはしてゐない。のろ[#「のろ」に傍線]の祀る神は、別にあるのである。
正月には、村中のものがのろ殿内[#「のろ殿内」に傍線]を拝みに行く。最古風な久高《クダカ》島を例にとると、其は確に久高《クダカ》・外間《ホカマ》両のろ[#「のろ」に傍線]の火の神を拝むのではない。拝まれる神は、のろ[#「のろ」に傍線]自身であつて、天井に張つた赤い凉傘《リヤンサン》といふ天蓋の下に坐つて、村人の拝をうける。凉傘は神あふり[#「神あふり」に傍線]の折に、御嶽《オタケ》に神と共に降ると考へてゐるのであるから、とりも直さずのろ[#「のろ」に傍線]自身が神であつて、神の代理或は、神の象徴などゝは考へられない。併し、神に扮してゐるのは事実であつて、其が火の神ではなく、太陽神《チダガナシ》若しくは、にれえ神[#「にれえ神」に傍線]と考へられてゐる様である。外間《ホカマ》のろ[#「のろ」に傍線]の殿内には、火の神さへ見当らなかつた位である。外間のろ[#「外間のろ」に傍線]或
前へ 次へ
全60ページ中56ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング