るのか決して知らない。神人には役わりがめい/\割りふられてゐて、重いものは何某の神に扮し、軽い者で歌舞《アソビ》を司る様である。さうして一々にそれ/″\神名がついて居る。山の神・磯の神或はさいふあ[#「さいふあ」に傍線](斎場御嶽の事か)神[#「神」に傍線]・にれえ神[#「にれえ神」に傍線]など言ふ風な名である。其外に、神人の神事に与つて居る時は、あそび神[#「あそび神」に傍線]・たむつ神[#「たむつ神」に傍線]など言ふ風に言ふ。さうして其中、其扮する神の陰陽によつて、誰はうゐきい神[#「うゐきい神」に傍線](男神)彼はをない神[#「をない神」に傍線](女神)と区別してゐる。人としての名と神としての名が、何処ののろ[#「のろ」に傍線]に聞いても混雑して来る。
事実、あちこちののろどんち[#「のろどんち」に傍線]に残つた書き物を見ても、神人の常の名か、祭りの時の仮名《ケミヤウ》か、判然せぬ書き方がしてある。殊にまぎらはしいのは、七人・八人とかためて書く様な場合に、七人・八人、又は七人神・八人神と書いたりする事である。実名も神名も書かないで、何村神と書いて、一年の米の得分を註記してある類も
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