ある。何村何某妻何村何某妻うし何村何某母親などあるかと思ふと、何村伊知根神[#「伊知根神」に傍線]何村さいは神[#「さいは神」に傍線]何村殿内神[#「殿内神」に傍線]など言つた書き方も見える。神人自身、神と人の区別がわからないので、祭りの際には、尠くとも神自身と感じてゐるらしい。其気持ちが平生にも続く事さへあるのである。神人を選択するのはのろ[#「のろ」に傍線]、根神《ネガミ》は、一人子の場合は問題はないが、姉妹が多かつたり、沢山の女姪の中から択ばなければならなかつたりする時は、ゆた[#「ゆた」に傍線]に占うて貰ふと言ふ変態の為方もあるが、大抵は病気などに不意にかゝつて、次の代ののろ[#「のろ」に傍線]として、神から択ばれたといふ自覚を起すのである。
処が、唯の神人《カミンチユ》は、さうした偶然に委せることの出来ない程、人数が多い。それで選定試験が行はれる。大体に於て、久高島に今も行はれるいざいほふ[#「いざいほふ」に傍線]といふ儀式が、古風を止めてゐるに近いものであらう。いざいほふ[#「いざいほふ」に傍線]をうける女は、若いのは廿六七、四十三四までが、とまりである。午年毎に、第三期ま
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