ら、小浜おほん[#「小浜おほん」に傍線]を作り、各香炉を据ゑて、遥拝所として居る。又、白保《スサブ》村の波照間おほん[#「波照間おほん」に傍線]の如きも其である。此等は皆、御嶽に属して居るけれども、個人で言へば、尾類《ズリ》が竈に香炉を置いて遥拝するのと同様である。
一族の神を祀るは、女の役目である。其家の香炉を拝するのは、其家の女であると言ふ観念が先入主となつて、女の旅行には必、此香炉を持つて行く。此は男にはよく訣らないが、女は秘密裡に此等を保存して居る。家によると、香炉が沢山ある所がある。中には、理由の訣らぬ香炉が出て来る。大昔、其家を造つたと称する者の香炉が二つある。嫁した娘の若死によつて、持つて行つた香炉が戻つて来る。さうして居る間に、何年も経ると理由の訣らぬ香炉が出来て来る。八重山では、香炉の格好が大分異つて来る。香炉に、ふんじん[#「ふんじん」に傍線]と、かんじん[#「かんじん」に傍線](又はこんじん[#「こんじん」に傍線])の二種類がある。ふんじん[#「ふんじん」に傍線]は、其家の分れて後の先祖を祀るもので、本神とも言ふ意味である。こんじん[#「こんじん」に傍線]の名義は
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