首里王朝で認めて居る神の中に、変な神がある。其神の根本は、天から来る神と、海から来る神とに分つが、先島《サキジマ》辺りは、此分け方は、行はれて居ない。此分け方は、民間信仰に基礎を置いたものであるが、島々の見方によると、多少の相違がある。琉球では、太陽神の他に、自然崇拝そのまゝの形を残して居る。それ故恐しい場所、ふるめかしい場所、由緒ある場所は、必、御嶽《オタケ》になつて居る。自分の祖先でも、七代目には必神になる。中山世鑑は、七世生神と書いてゐる。此は、死後七代目にして神となると言ふことである。以前には、人が死ぬと、屍体を、大きな洞窟の中へ投げこんで、其洞窟の口を石で固め、石の間を塗りこんだものであるが、此習はしが次第に変化して、墓を堅固に立派にするやうになつた為に、墓を造つて財産を失ふ人が多くなつた。七代経つと、其洞の中へは屍を入れないで、神墓(くりばか[#「くりばか」に傍線])と称し、他の場所へ、新墓所を設ける。神墓《クリバカ》は拝所となる。此拝所ををがん[#「をがん」に傍線]と言ふ。時代を経るに従つて、他の人々も拝する様になる。此|拝所《ヲガン》が、恐しい場所になつて来る。拝所《ヲ
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