はおらんさん[#「おらんさん」に傍線]の事で、さすかさ[#「さすかさ」に傍線]も、翳《サ》し蔽ふ笠の事だと言ふ説がある。笠が最後に王城の庭に樹ち、王始め群臣の集つて見て居る前で、おらんさん[#「おらんさん」に傍線]が、三十余り立つて踊る。即、人間が神の姿を装うて居るのだが、其間は、すべての人間は、其仮装者に神格を認め、仮装者自身も、其間は神であると言ふ信念を有つて行動するのである。
島尻郡の知念《チネン》には、昔、うふぢちう[#「うふぢちう」に傍線](大神宮)と言ふ人があつた。ちう[#「ちう」に傍線]とは、睾丸の義で、うふぢ[#「うふぢ」に傍線]は大の義である。此人の子が、また、大豪傑であつた。うふぢちう[#「うふぢちう」に傍線]の死後棺の蓋を取つて見ると、屍体は失くなつて居て、柴の葉が残つて居た。此は、昇天したのだと言うて居る。此人は、琉球神道記によると、実在の人物ではなく、海神であると見えて居る。此海神は、大きな睾丸を有つて居て、肩に担いで歩く。此頃では、国頭郡の方へ行つて居ると言ふ。どう言ふ訣か、解説に苦しむ事柄である。此海神の子孫が、現在|字《あざ》をなして残つて居る。
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