てゐる地方の広い点から見ると、決して五十年百年以来の模倣とは思はれない。先づ方一間、高さ一間位の木枠《キワク》を縦横に貫いて、緯棒《ヌキボウ》を組み合せ、其枠の真中の、上下に開いた穴に経棒《タテボウ》を立てる。柱の長さは電信柱の二倍はあらう。上にはほこ[#「ほこ」に傍線]と称へて、祇園会のものと同じく、赤地の袋で山形を作つた下に、ひげこ[#「ひげこ」に傍線]と言うて、径《サシワタシ》一丈あまりの車の輪の様な※[#「車+罔」、第3水準1−92−45]《オホワ》に、数多の竹の輻《ヤ》の放射したものに、天幕を一重或は二重にとりつけ、其陰に祇園巴《ギヲントモヱ》の紋のついた守り袋を垂《サ》げ、更に其下に三尺ほどづゝ間を隔てゝ、十数本の緯棒《ヌキボウ》を通し、赤・緑・紺・黄などゝけば/\しく彩つた無数の提燈を幾段にも懸け連ねる。夜に入ると、此に蝋燭を入れて、夜空に華かな曲線を漂し出すと、骨髄まで郷土の匂ひの沁み込んだ里の男女は、心も空に浮れ歩く。其柱の先には、前に述べただし[#「だし」に傍線]を挿すのである。
さて此ひげこ[#「ひげこ」に傍線]と称するものに注意を願ひたい。ひげこ[#「ひげこ」に
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