盆踊りと祭屋台と
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)盂蘭盆《ウラボン》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|産土《ウブスナ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「車+罔」、第3水準1−92−45]《オホワ》に

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)あり/\と
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     一 盂蘭盆と魂祭りと

盆の月夜はやがて近づく。広小路のそゞろ歩きに、草市のはかない情趣を懐しみはするけれど、秋に先だつ東京の盂蘭盆《ウラボン》には、虫さへ鳴かない。年に一度開くと言はれた地獄の釜の蓋は一返では済まなくなつた。其に、旧暦が月齢と名を改めてからは、新旧の間を行く在来《アリキタ》りの一月送りの常識暦法が、山家・片在所にも用ゐられるやうになつたので、地獄の釜の番人は、真に送迎に遑なきを嘆じてゐるであらう。諺に「盆と節季が一緒に来た」といふ其師走の大祓へに、祭や盆を搗《カ》て合せた無駄話しをして見た
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