で様々な作りものをするのを見ると、神にも精霊にも招き寄せる方便は、一つであつたといふ事が訣る。今日こそ練りもの[#「練りもの」に傍線]・作りもの[#「作りもの」に傍線]に莫大な金をかけてゐるから、さう/\毎年新規に作り直すといふ事は出来ないので、永久的のものを作つてゐるが、古くは一旦祭事に用ゐたものは、焼き棄てるなり、川に流すなりしたものである。話頭が多端に亘る虞れはあるが、正月十五日の左義長《トンド》も、燃すのが目的でなく、神を招き降した山を、神上げの後に焼き棄てた、其本末の転倒して来た訣である。
何故作りものを立てるのかと言ふと、神の寄りますべき依代《ヨリシロ》を、其上に据ゑる必要があるからだ。神の標山には、必神の寄るべき喬木があつて、其喬木には更にある依代《ヨリシロ》の附いてゐるのが必須の条件で、梢に御幣を垂れ、梵天幣《ボンテンヘイ》或は旗を立てたものである。たゞ何がなしに、神の目をさへ惹けばよいといふ訣ではなく、神の肖像ともいふべきものを据ゑる必要があつたであらう。神の姿を偶像に作つて、此を依代《ヨリシロ》として神を招き寄せる様になつたのは、遥に意匠の進んだ後世の事で、古くはも
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