》を伴ふ風習は、地上に神の常在しない証拠である。渡御に一旦他所に降臨して、其処から祭場に臨まれる事を示すのである。宵祭《ヨミヤ》まつりの形式が仏家に移ると、盂蘭盆の迎へ火を焚く黄昏となる。高燈籠《タカトウロウ》・切籠燈籠《キリコトウロウ》の吊されるのも、精霊誘致の手段に外ならぬのである。かうして愈本祭りとなる。本祭りが済むと、神は高天原へ還られる。此日は、現在、祭りの上に存せない地方もあるので、其の名称の標準とすべきものはない。
三 祭礼の練りもの
祭礼《サイレイ》の練《ネ》りものには、車をつけて牽くものと、肩に載せて舁《カ》くものとの二通りあるが、一般に高く聳やかして、皆神々の注視を惹かうとするが、中には神輿《ミコシ》の形式を採り入れて、さまでに高く築きなすを主眼とせないものもある。地車《ダンジリ》の類は此である。一体、練りものゝ、土台から末まで柱を貫くのが当然なのに、今日往々柱のない高い練りものゝあるのを見る。練り屋台には、土地によつて様々の名称がある。ほこ[#「ほこ」に傍線]・やま[#「やま」に傍線]などの類は、柱を残してゐる。屋台・地車の類は、柱がない。山車には、
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