るだんじり[#「だんじり」に傍線]・だいがく[#「だいがく」に傍線]・だし[#「だし」に傍線]・ほこ[#「ほこ」に傍線]・やま[#「やま」に傍線]などは、みな標山の系統の飾りもので、神輿とは意味を異にしてゐる。町或は村毎に牽き出す祭りの飾りものが、皆|産土《ウブスナ》の社に集るにつけても、今日では途次の行列を人に示すのが第一になつて、鎮守の宮に行くのは、山車《ダシ》や地車《ダンジリ》を見せて、神慮をいさめ申す為だと考へてゐるが、此は意味の変遷をしたもので、固より標山《シメヤマ》の風を伝へたものに相違ない。
標山系統の練りもの類を通じて考へて見ると、天つ神は決して常住社殿の内に鎮座ましますものではなく、祭りの際には、一旦他所に降臨あつて、其処から御社へ入られるもので、還御の際にも、標山に乗つて再び天降りの庭に還つて、其処から天駆《アマガケ》り給ふのである。神社が神の常在地でない事は勿論、其処へ直ちに天降らせ給ふのでもない。大阪天満の天神祭りに船渡御があつて、御迎へ船が出ることなども、祭りの際に、神は他所に降つて、其処から祭場に臨むといふ暗示を含んでゐるのである。
祭礼には必|宵祭《ヨミヤ
前へ 次へ
全20ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング