は、恐らくこゝに起原があるのであらう。それでも単に自分の努力一つでは、目に見えぬ邪神のつけ入るのを避ける事のむづかしさを知つた時に、神仏の庭に集つて、神聖な場所で、暫くでも安心な夜を過さうとする。此は一郷《イツキヤウ》精進と称すべきもので、附属条件として、大原の雑魚寝《ザコネ》・筑波の※[#「女+櫂のつくり」、第3水準1−15−93]歌会《カヾヒ》などの雑婚の風習が伴つて来る。
が一方には、厳重に此夜みとのまぐあひ[#「みとのまぐあひ」に傍線]を行ふ事を禁じてゐるものもある。庚申待ちの盗孕《タウヨウ》、泉北郡|百舌鳥《モズ》村の暮から正月三日へかけての、百舌鳥精進のやうなのが此である。此は禁欲を強《シ》ふる仏道・儒教の影響があるのではないかと思ふ。単純に此点ばかりから見れば、地方の青年会が盆踊りを禁じたのは、祖先に対する一種面白い謀叛である。我々は歌垣或は※[#「女+櫂のつくり」、第3水準1−15−93]歌会を以て、盆踊りの直系の祖といふ様な、粗忽な事を云ひたくない。たゞ其間に、遠縁の続きあひを見る事が出来れば沢山である。

     六 精霊の誘致

度々繰り返して来た様に、神であれ
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