#「ばやし」に傍線]がそれです。はやす[#「はやす」に傍線]は、はなす[#「はなす」に傍線]・はがす[#「はがす」に傍線]などゝ一類の語で、ふゆ[#「ふゆ」に傍線]・ふやす[#「ふやす」に傍線]と同じく、霊魂の分裂を意味した語なのです。だから、松を迎へる事は、分霊を迎へる事で、松は即、その霊ののりものだつたのです。
次に、此松の枝にやす[#「やす」に傍線]をかける訣ですが、昔の人は、かうして迎へて来た霊、或はやつて来た霊には必、不純なものが随伴すると考へたのです。盆にも、正式に迎へる聖霊への供物の外に、無縁仏の供物を作りますが、それと同じ様に、歳神様にも、家へ這入つて貰つては困る神が附隨して来るので、それを防ぐべく、此やす[#「やす」に傍線]をかけて供物をするのです。
とにかく、こゝの門松には、古い信仰が残つてゐるのです。此門神様の周囲に、鬼木或はにう木[#「にう木」に傍線]と言うてゐる、薪に十二月或は十三月と書くか、十二本或は十三本の筋をひくかしたもの(元は、閏年だけ十三月としたのですが、後には、今年も此様に月が多いと祝ふ意味で、平年にも十三月と書く様になつたのです)を並べ、又たくさ
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